苦役列車  西村賢太 著

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20110304_1991517<あらすじ>
友もなく、女もなく、一杯のコップ酒を心の慰めに、その日暮らしの湾港労働で生計を立てている十九歳の貫多。或る日彼の生活に変化が訪れたが・・・。こんな生活とも言えぬような生活は、一体いつまで続くのであろうか-。

144回 芥川賞受賞作(2010年)

<感想>
私小説です。私と同年代の著者。
父親の強姦事件により小学生の時から「犯罪者の息子」となり、そのことが彼の人生を狂わせるキッカケになったようです。
常用漢字ではない漢字を多く使用している上に文章運びが昭和っぽくて一昔前の小説のように感じますが、描かれているのは底辺社会に生きる19歳の貫多と言う青年の生き様です。
多感な貫多は犯罪者の子どもを言うことを必要以上に意識しているようにも思うけれど、犯罪者の子どもと言う事実を背負って日本で生きて行くことは容易いわけはないでしょう。
だから貫多は陰の社会で生きる道を選んでいるようにも思います。
屈折した性格、ひねた考えこう表現するしかないような貫多の感情が描かれてはいますが、描かれているその感情は、誰もが多かれ少なかれ感じる気持ちであって、それを認めて言葉にするのか(こんなひねた考えはいけない)と自分で打つ消すのかの違いのように思いながら読み終えました。
女の私は女性に対する貫多の考えを不愉快に思った部分もありますが、それは気持ちを通い合わせる女性と出会えていないのだと思いたい。
彼に小説があって良かった。これからの彼の小説に注目しようと思いました。
 

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