そこへ行くな 井上荒野 著

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<あらすじ>
愛するゆえに、迷いこむ。 行ってはならない場所へー。
一緒に暮らす純一郎さんは、やさしい人だ。出張が多くて不在がちだけれど、一人息子の太郎をよく可愛がっている。じゅうぶんに幸せな親子三人の暮らしに、ある日「川野純一郎の本当のことを教えます」と告げる女からの電話が舞い込みー(「遊園地」)。行ってはならない、見てはならない「真実」に引き寄せられ、平穏な日常から足を踏み外す男女を描いた七つの物語。
第6回中央公論文芸賞じ受賞作。

<感想>
井上荒野さんらしい読んでいて何となく心がざわざわし、結局ほとんどの短編で結論が書かれていない短編集です。
私はこの感覚が好きで、井上荒野氏の小説を読むワケですが、結果を求めたい読者には(えー!?)って読感が残る小説でしょう。
「遊園地」ー 純一郎さんがラストで、祥子の「結婚してほしいの」って言葉をどのようにかわしたのか気になります。
「ガラスの学校」ー 姉妹の関係を軸に姉が突然夫から離婚を切り出され、まったくそれを理解しようとせず、現状を受け入れようとしない様を描いた小説でした。離婚を言われる理由が全くわからない人っているんでしょうね。
「ベルモンドハイツ401」ー 30代半ばの高校の同級生の人間模様を描いたもので、私はあまり好きじゃない作品でした。
「サークル」ー 大学生の話。ある大学のミュージシャン志望の男子学生のサポーターを続けてきた女子3人の中のひとりにスポットをあてた作品でした。
「団地」ー 老人ばかりが住む古い団地に越してきた若夫婦の話でした。1番何が言いたいのかわかりにくいように思いましたが、私が思うに、30代の仕事を持たない(趣味の域で仕事はしているが)子どもがいない夫婦が抱える漠然とした不安を容赦なく突いてくる老人たちの中で、見て見ぬ振りをしてきた現実を直視した祥子の話だったんじゃないかと思います。
「野球場」ー 誰もがブスだと認める女性が、自分に気があるフリをしてきたせいで、関係を持ってしまう男の浅はかさ。紙山幸恵と名乗るナゾの女性が消えた理由がとても気になりましたが、当然描かれてはいません。
「病院」ー 中学生の男子が主人公。重い病を患った母親が、1日毎に死へと近づいている様と中学生が抱える人間関係とを対比させ描いた作品。印象に強く残っています。

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