海の仙人  絲山秋子 著

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<内容>
心やさしい男と女と神様。
背負っていかなきゃならない最低限の荷物 ― それは孤独。
碧い海が美しい敦賀の街。
ひっそり暮らす男のもとに神様がやって来た―。

「ファンタジーか」
「いかにも、俺様はファンタジーだ」
「何しに来た」
「居候に来た、別に悪さはしない」

<感想>
読み終わって最初に出た言葉は「ん~どうなんやろ」。

冒頭、浮き世離れした男、勝男と「ファンタジー」を名乗る神(!?)が出てくるので
ファンタジー小説かと読み始めるが、中盤以降、「ファンタジー」の存在以外、
勝男の事、勝男の周りで起こる現実がとても孤独でシビアな事ばかり。
「ファンタジー」の存在と、勝男が世の中の「欲」から1番遠い感覚で
変わった生活をする仙人のようであることで何とか<痛さ>から遠ざけてくれている。
「沖で待つ」もだが、絲山氏は本作品でも成熟した大人、自立した人間を描いている。
自立することは「孤独」を受容することでもあるだろう。登場人物はみなが
「人間は孤独である」ということを真っ向に捉え、人に頼らない。耐える、孤独に。
それ故に、その生き方が逆に自分本位で生きてしまっている矛盾。ツラい事実。

「孤独ってえのがそもそも、心の輪郭なんじゃないか?
 外との関係じゃなくて自分の在り方だよ。
 背負っていかなくちゃいけない最低限の荷物だよ」。

絲山氏は生きると言う事は「孤独」で、
それは人間が生きるのに最低限背負っていく荷物なんだと言いたかったのだろう。

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