MONSIEUR LAZHAR *ぼくたちのムッシュ・ラザール*

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20130424_2401632011年 / カナダ

監督:フィリップ・ファラルドー

CAST:
モハメッド・フラッグ、ソフィー・ネリッセ、エミリアン・ネロン
    

2011年トロント国際映画祭最優秀カナダ映画

<STORY>
カナダ、モントリオールの小学校。冬のある朝、牛乳当番のため早めに登校したシモンが、教室で担任教師:マルティーヌが首を吊って死んでいるのを見つける。その光景は、アリスも見てしまう。急遽、新しい教師を探すが見つからないまま時が経ったある日、新聞で事件のことを知ったとアルジェリア系移民のバシール・ラザールが応募してくる。カレはアルジェリアで19年教師をし、カナダに永住権があると言い、児童のために協力したいと申し出る。採用されたラザールは、温和な性格から早々に子どもたちと打ち解けるが、机の配置や、児童には難解なバルザックの古典小説の口述筆記を課すなど授業方法は上手とは言えなかった。子どもたちはラザールの授業に戸惑いつつも、徐々に以前の生活を取り戻していく。なかでもアリスはラザールの母国アルジェリアに興味を持ち、写真を集めるなど、誰よりも積極的に新しい環境を受け入れようとするが、マルティーヌ先生の死を忘れることができなかった。そして、その現実を遠ざけようとする学校側の姿勢に疑問を持ち、先生の死を気にしていない振りをするシモンに苛立つ。一方、ラザールにも解決途中の問題があったのだった。

<感想> 評価 ★3
この作品の魅力は、サスペンスではないのに、謎めいていること。しかし、ヒューマンドラマなので、謎が明らかになるのを期待して見たワケではありません。予想通り、謎をハッキリ説明されることなく終わります。
不思議なのは、謎が明らかになっていないのに不満を感じないこと。きっと、日常生活は、理不尽なこと、説明できないことが多いからでしょう。それが”生きること”と伝わるような作品でした。

このレビューをまとめるのにかなり苦労しました。書きたいこと、言いたいことはいっぱいあるのに、どうまとめて伝えれば良いのかわからなかったからです。

担任教師が教室で自殺、生徒がそれを発見すると言うセンセーショナルなコトが起きますが、映画の中では日常があります。
その日常の中に、それぞれの生徒が抱える家庭環境や、自殺によるトラウマ、そして異国から来たラザール先生の抱える問題が絡んできます。
全く理不尽なコトをした担任教師:マルティーヌ先生。その行為の身勝手さに腹が立ちます。しかし、事件が起きたことで子どもたちとアルジェリア人のラザール先生が出会います。
よくある感動作品のようにラザール先生と子どもたちの間に劇的なことが起こるワケじゃありません。この自然体な感じが、この映画を魅力的にしていると思います。

謎・1)マルティーヌ先生はナゼ自殺したのか?

ぶっちゃけ死んだものにしか本当の理由はわからないと思います。だから映画でも明らかになりません。明らかにならないから、先生も子どもたちも引きずってしまうんですよね。
「理由」や「原因」がわかれば少しは救われるのに。
よって、わからないことで、子どもたちはそれぞれに心に重荷を抱えています。
特にシモンとアリスの心のトラウマは深いと言うのが、最初から追っていくとわかります。
どうやら、シモンがマルティーヌ先生が自殺したことに何か関係があるのではないか?と思わせます。それは、シモンが「第一発見者」と言うだけじゃない何か。そして、それに気づいているのは、友だちのアリス。アリスは、シモンのことが原因ではないかと思っており、先生の死を見ても態度が変わらないシモンを許せないことでイラつくのです。
これはシモンが泣きながら気持ちを吐露するシーンに繋がっていきました。
つらかったろうと思います。死んだ人を悪く言いたくないけれど、子どもたちを苦しめた先生は罪深い。

謎・2)永住権を持つ教師生活19年のアルジェリア出身ラザール先生

これも観ていく中で、ラザールが難民であり、教師でなく、妻子を国の政治的テロと思われる原因で殺されたことがわかります。
母国アルジェリアが抱える問題。カナダに生活拠点を移すための準備として先に亡命していたことにより、自分だけが助かったと言う後悔しきれない懺悔のきもち。
アルジェリアを思い出させる音楽を聞いているうちに自然と踊り出すシーン・・・せつないです。
しかし、ウソはいつかバレます。校長から退職を言い渡され、校長に懇願し子どもたちに最後の授業をするラザール先生。
心通うシーンが胸に迫ります。映画の中では、カレが子どもたちに明日から授業ができないと言うことをどのように伝えたのかは描かれていません。ラザールを慕ったアリスがカレとハグしあうシーンで終わりました。

謎・3)ナゼ、ラザールは教師だと言い、この小学校に応募してきたのか?

これも謎のまま。
妻がアルジェリアで教師だったと言うことが少なからず関係しているとは思うのだけれど。
子どもを亡くしたことも関係してたのかも知れませんね。

最後に、子どもたちの長い人生の中で、「生と死」について否応なしに向き合うこととなったこの事件。それをきっかけに出会った異国のラザール先生。ラザールが、子どもたちに寄り添ったことが子どもたちの人生に少しでも意味のあるものを残していたらいいのに・・・と思わずにはいらない作品でした。

素晴らしい作品でした。

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