卒業  重松清 著

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20090507_690630<あらすじ>

悲しみをそっと空に放つための四編――旅立ちのときが、やってきた。
「わたしの父親ってどんなひとだったんですか」ある日突然、
十四年前に自ら命を絶った親友の娘が僕を訪ねてきた。
中学生の彼女もまた、生と死を巡る深刻な悩みを抱えていた。
僕は彼女を死から引き離そうと、亡き親友との青春時代の思い出を語り始めたのだが――。
悲しみを乗り越え、新たな旅立ちを迎えるために、
それぞれの「卒業」を経験する家族を描いた四編。

<感想>
重松作品読破10冊目。毎回言うけど、ほんとうに上手い。
4編ともに凝った話ではなく、現実にあるかもなぁと思う話なのに、
先を読みたくなるように組み立てられていて、ツボを得たように心にぐっとくるシーンへと繋がる。
重松氏と私の年代が一緒だから彼の描く主人公が男であってもどこか共感できるし、
子供の頃の時代背景・流行ったものが同じだから懐かしくなる。それもツボだったりする。
まさに五感に働きかけてくるような作品。
4編について少しコメント
◆「まゆみのマーチ」
親の死と直面することが遠からずある年代であり、思春期のむずかしい子供を持つ親として
主人公のいる状況は今の自分とリンクする。
親としてできることの最大で最低限のことは、子供に「愛している」と言い、伝えることなのかも知れない。
私もそう思って子育てをしているけれど、それが間違いではないと思わせてくれた。
まゆみがそれで救われたように。
◆「あおげば尊し」
私の父親は教師である。小説の中に出てくるような厳しくて、冷たくて、容赦なく退学処分にするような教師だった。
かぶる部分がありすぎて、少し辛かった。
いつか父親を見送る時がくる。尊敬できる部分も、ありえないと思う部分もある父だけど、
感謝の気持ちだけは伝えておこうと思った。
ちなみにこの作品は市川準監督がテリー伊藤を息子役とし映画化している。
「卒業」
自殺願望を持っているフツーの中高生の何かを少し見たような気持ちになった。
私はソレで悩んだことはないが、「自分のルーツ」と言うのはアイデンティティーを確立するのに
重要であると聴く。
わだかまっている何かと対峙し人はそれを越えていくんだなと思った作品。
◆「追伸」
それぞれの思いが伝わる話だった。
誰も間違ってはいないけど、誰もが人を思いやれる余裕がない。
それが人との関係を悪い方向へと進めていくんだなっと。
人が「死」を迎える前に、言うべきことは伝えておかないと。そう思った
 

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