見張り塔からずっと 重松 清 著

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<あらすじ>
発展の望みを絶たれ、憂鬱なムードの漂うニュータウンに暮らす一家がいる(「カラス」)。1歳の息子を突然失い、空虚を抱える夫婦がいる(「扉を開けて」)。18歳で結婚したが、夫にも義母にもまともに扱ってもらえない若妻がいる(「陽だまりの猫」)。3組の家族、ひとりひとりの理想が、現実に浸食される。だが、どんなにそれが重くとも、目を逸らさずに生きる。僕たちの物語―。3編。

<感想>
重松作品5作目に選んだのはコレ。短編集だが重松作品にはハズレない。ありふれた日常の話の中の見えていない残酷な、非情なものの正体をあらわに見せる筆圧には尊敬し、感動する。
「カラス」
大人社会の「いじめ」を浮き彫りにした作品。
人はここまで残酷になるんだと読んでいて苦しくなった。私ならそこから逃げるだろう。逃げることは負けではない。学校のいじめ問題と同じように。
「扉を開けて」
愛する息子を失う気持ちはどれほどツライものか。
主人公の妻・佐和子が精神のバランスを崩してしまうことを誰も責めることはできないだろう。しかし、大切なものを失っても人は生きていかなければならない。生きていくと言うことは永遠に失った子供を思い続けることなのだろうか・・・?日常を楽しんだり、笑ったりすることは失った子供を弔うことにはならないのだろうか?生きていくことの苦しさを読んだ。
曖昧に見せて終わるラスト・・・それで良かったように思う。
「陽だまりの猫」
多分、どこにもある夫婦の形だと思う。
伸雄さんもみどりさんも根底では互いのことを思い合っているけれど、
目の前の相手の行動のひとつひとつにイラだつのだ。結婚するまでは、そこが「好きなひとつ」だったのに。それが日常。どちらも悪くないし、どちらも少し思いやりや変わろうという努力がないのだろう。ほんの少しの変化がとてもむずかしく簡単でないのだ。
読み終えて、結局・・・このふたりは離婚を選びはしないだろうと思った。

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