<あらすじ>
不器用だからこそ、ただ純粋で激しく狂おしい恋愛小説。
魂を焼き尽くすほどの恋。
封印したはずのあの痛みを蘇らせてしまう小説。
大学2年の春、卒業した高校の演劇部を手伝い始めた泉は顧問の葉山先生と再会し、小野君をはじめ新たな友人ができる。徐々に熱気を帯びる稽古、迎えた本番の日。時は流れ、張りつめたような恋心が交錯してゆく。
<感想>
読み始めは辛く、なかなか読み進まなかったが、中ほどぐらいから一気に完読。
文体のせいなのか、登場人物の性格、生活感の薄い日常風景など、とにかく抽象的でほわ~とした≪感覚の文章≫と感じた。そのクセ、泉が小野くんや、葉山先生に感じた手が触れた瞬間や、香り、袖を捲り上げた腕の雰囲気などの描写がとてもリアルで、自分の記憶の中の≪その瞬間≫を思い出されて何度か胸がキュンとした。
まさしく10代後半の青春のほんの数年を瑞々しく描かれた作品だった。
小説の中で起こる事件はセンセーショナルだったりするのに、ほわっとした文体のせいであまり残酷感を感じない。
私は、泉と言う人間を理解できなくないけれど、気弱かなと思えば孤独を愛していたり、控えめなのかと思うと大胆な行動をしたりして自分と似ているところを探しきれず、小説の中に浸りきれなかった。その上、葉山先生のように優しすぎて残酷な人は好きじゃないし、小野くんのように内に凶暴性を秘めた人は苦手ときたら・・・淡々と読むしかない。
それでも、恋愛は人を必ず傷つけるんだなんて事をリアルに思い出したりした。
小説の最後に
「これからもずっと同じ痛みを繰り返し、その苦しさと引き換えに帰ることができるのだろう。あの薄暗かった雨の廊下に。」とある。
そうなんだ。いつかは薄らぐけれど、自分の中で成就できなかった激しい恋愛感情はいつまでも心の痛みを伴うんだ。痛みの形は時と共に変化するけれど。
この小説は女性向きだろう。逆に問いたい、男性にわかるのだろうか?と。
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