<あらすじ>
1930年頃、大阪の蒲鉾工場で働く金俊平は、その巨漢と凶暴な性格で極道からも恐れられていた。ある日、飛田遊廓の女郎・八重の虜になって錯乱した同僚が、自分の腹を切り裂いて死ぬという騒動が起こる。興味を抱いた金俊平は八重を買いに行く。そこで八重の淫蕩な女体に溺れて身請けするが、逃げられてしまう。自棄になった金俊平は暴行事件を起こし工場をクビになる。数カ月後、金俊平は飲み屋を経営する子連れで美貌の李英姫を凌辱して強引に結婚するが、かつて賭場の争いで半殺しにした極道たちとの大乱闘の末、大阪を離れる。直後、太平産業では朝鮮人労働者の解雇をめぐる激しい労働争議が起こるが、それは太平洋戦争前夜の暗い時代の幕開けに過ぎなかった。おのれ独り、徹底的に孤立した男がいる。凄まじい欲望が、家族と女たちを呑み込み、自らも喰い滅ぼす。実在の父親をモデルに、ひとりの業深き男の激烈な死闘と数奇な運命を描いた、空前絶後の1368枚。
<感想>
金俊平と言う男の圧倒的な存在感、生き様に嫌悪感を抱きながらも、不思議と読み進まないと気が済まなくなってしまう・・そんな作品だった。
「血と骨」は1998年の作品である。
梁石日氏は、在日韓国人作家であり、歴史を踏まえたセンセーショナルな作品を執筆している作家だと知っていたのだが、「在日」と言うキーワードで過去の歴史と向き合わされるんだろうと想像し、それが憂鬱で避けてきたところがあった。
しかし、北野たけし主演での映画化されたのをきっかけ読むことにした。
舞台は大阪。
地元なので入り込みやすかった。
小説の中には日本批判はほぼない。
それよりも、梁石日氏の父親をモデルにしたと言う「金 俊平」の凄まじい生き様と、
戦前・戦中・戦後の混乱の在日社会の現実が浮き彫りにされている。
「金俊平」は本当に作者の父親だったのだろうか?
疑いたくなるぐらいに血も涙もない男だった。
自分以外のものを全く信用せず、腕力・体力を頼りに家族さえ慈しむことのない俊平。
そんな俊平を嫌悪しながらも逃れられず、翻弄される家族と周囲の人々。
あまりの「業の深さ」と「断つことのできない血縁関係」に息苦しささえ感じた。
文化の違いは「血と骨」と言う題名にも表現されているようで、
朝鮮・韓国では、「血は母より受け継ぎ、骨は父より受け継ぐ」という儒教思想があるのだそうだ。
母より父が重要であると言う男尊女卑の考えが根深いらしい。
作家:梁石日にとっての両親はまさに彼の「血と骨」なのだろう。
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