「ベーコン」 井上荒野 著

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20110101_1917122<あらすじ>
初めてだった。男から、そんな目で見つめられたのは-。家族を置いて家を出た母が死んだ。葬式で母の恋人と出会った「私」は、男の視線につき動かされ、彼の家へ通い始める。男が作ったベーコンを食べたとき、強い衝動に襲われ・・・表題作ほか、人と心の奥にひそむ濃密な愛と官能を食べることに絡めて描いた短編集。胸にせまる10の物語。

<感想>
「静子さんの日常」を読んで好きになった井上さんの文章。
今回は短編集を読んでみた。
「ほうとう」「クリスマスのミートパイ」「アイリッシュ・シチュー」「大人のカツサンド」「煮こごり」「ゆで卵のキーマカレー」「トナカイサラミ」「父の水餃子」「目玉焼き、トーストにのっけて」「ベーコン」の10編。
この中で1番好きなのは「ほうとう」。次は「煮こごり」と「ゆで卵のキーマカレー」だった。井上荒野さんの文章の特徴の1つに、主人公の気持ちを文章としては直接的に書かかず、相手の言葉や行動を書くことで、読み手側にその時の主人公の気持ちを想像させるところにあると思う。この手法がバッチリマッチした瞬間、せつなさが押し寄せることがあり、それが井上荒野さんの魅力なのではないかと思うのだ。
まさにそれで「ほうとう」の主人公:温子と私は同化してしまった。
短編集だが、10この食べ物を題材に、いろんな形の愛について書かれているので統一感のあう短編集となっている。
巧いと思う。まだまだ井上荒野さんの小説を読んでみたいと思いました。

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