疾走 重松清 著

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20090507_690593
<あらすじ>
広大な干拓地と水平線が広がる町に暮らすシュウジは、寡黙な父と気弱な母、地元有数の進学校に通う兄の四人家族だった。教会に顔を出しながら陸上に励むシュウジ。
が、町に一大リゾートの開発計画が持ち上がり、優秀だったはずの兄が犯したある犯罪をきっかけに、シュウジ一家はたちまち苦難の道へと追い込まれる・・・。
誰か一緒に生きてください―。犯罪者の弟としてクラスで孤立を深め、やがて一家離散の憂き目に遭ったシュウジは故郷を出て、ひとり東京へ向かうことを決意。途中に立ち寄った大阪で地獄のようなときを過ごす。孤独、祈り、暴力、セックス、聖書、殺人―。人とつながりたい・・・。ただそれだけを胸に煉獄の道のりを懸命に走り続けた少年の軌跡。

<感想>
上下巻の文庫本。4日で読んだ。
重くてツライ小説だったが読み終えて心に重いモノが残りつつもどこかで爽快感のような、安心感のような・・(もう痛いこともつらいこともないよね、シュウジ)っと言ってやりたいような心境になっている。
この小説は、進め方がとても上手い。
主人公:シュウジの視点で描かれながらも「おまえ」と言う第3者の目で話が進むのが不思議で最初は違和感もあったが、結果的にそれが良かったしその効果をラストで知ることになる。また、聖書からの引用文が多く出てくるがそれが効果的だった。過去に遠藤周作の「沈黙」や貫井徳郎の「神のふたつの貌」などキリストの教えが出てくる小説を読んだがここまで聖書の言葉に説得力を感じた小説は初めてだった。シュウジがわからないなりにも聖書に救いを、生きる意味を、今の苛烈な状況の意味を求めようとして読む姿が切ない。
今、読み終えて感じている気持ちをどのような言葉にすれば正しく伝わるかわからない。言えることは1つ。私も子を持つ親である。子供は親が守るべき存在で、守れるのは親しかいなくて、子供も親に(他の誰でもなく)愛して欲しくて、親に抱きしめられたいのだと言うこと。
ひとはひとりで生きている。生きてるけどひとりでは生きれない。
 

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