捨ててこそ、空也 梓澤 要著

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20131010_511525<あらすじ>
醍醐天皇の皇子ながら寵愛を受けることなく、母からも手酷い仕打ちを受け都を出奔した空也。下層民とともに野辺の骸を弔いつつ、人の世の苦しみと喜びを知り尽くしていく。西国から板東へ、諸国を巡り、仏の救いと生きる意味を探し求め、再び京へ戻った空也が見た光景とは。将門の首に祈りを捧げ、比叡山の権威にも屈しなかった空也が最後に母を許したとき、涙の奇跡が起きる。熱涙に満ちた人生と仏教の核心に迫る歴史小説。

<感想>
六波羅蜜寺を訪れた時に見た「空也上人立像」。
立像の口から六体の阿弥陀仏が飛び出ているという、とてもユニークな姿からなのか、理由なく惹かれるものを感じ、その後ほんの触りではあるけれど、仏教・仏像について勉強するキッカケになった人物が空也上人です。
これもまたお導きなのか(笑)偶然にも本書と出会い、むずかしい仏教思考小説に少々ビビりながらも購入、3日で読破しました。
思っていた以上に読みやすく、おもしろい小説でした。
歴史小説であるため、史実と異なった時代背景、人物設定で書かれているようです。
たとえば、出自は不明とされている空也を、醍醐天皇の後宮の子どもで父帝から寵愛されなかった不遇の子として描いたり、同時代を生きた平将門と空也を出会わせたり、歴史ロマンを感じさせているよう。史実に詳しいひとならそこを楽しむこともできるのでしょう。残念ながら史実に疎い私は、どこまでが事実でどこが空也にまつわる逸話で、どれが事実なのかの区別ができない情けない状況で読み終わることになってしまいましたが・・・。

京都の近くに住んでいること、それだけを理由ではじめた京都参拝。
今では朱印帳を持って年3~4回出かけるようになりました。そのおかげで少しずつ京都の歴史、地名、仏教、仏像のことを知識として得るようになってきました。京都で参拝できる多くの寺社は平安・室町時代のもの。空也上人が生きていた時代はまさにこの頃(平安時代)。訪れた仁和寺が出てきたり、菅原道真の怨念の話と北野天満宮の建立話など、興味を持って読むことができました。 自分で少し学んだ仏教のことも、この小説でよりわかりやすくなったところがあります。
空也が言ったとされる「身を捨ててこそ」に関わる部分、清くシンプルで強く・・・きっと私はここに惹かれているのだと思います。
万人に紹介できる小説ではありませんが、仏教、空也上人に興味があるならぜひ読んでもらいたいです。

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